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七福神 小幡人形七福神(田中武氏撮影)
連日、テレビのトップ・ニュースに登場したアフガニスタンは、世界で最も貧しい国の一つといわれる。
ソ連侵攻以来の20年にわたる戦乱の爪跡以前に、画像が映し出す自然は、砂と石しかない世界である。
この過酷な自然に生きるためには、イスラム教の戒律の厳しさが必要だったのかもしれない。
日本はといえば、水に恵まれ、緑に恵まれ、人々の祈りは豊穣の実りが維持されることを願うばかりである。
今年の豊かな実りが来年も続き、できるなら、来年は今年よりももっと豊かになるよう。
その欲張りな願いが、一つに、「七福神」を生みだした。
湖中に赤い鳥居の建つ、「近江の厳島(いつくしま)」と呼ばれる
白鬚神社(高島町鵜川)は寿老人を祀り、「琵琶湖八景」の一つであり、
桜の名所としても知られる真言宗・大崎寺(マキノ町海津大崎)は毘沙門天を祀る。
三井寺開祖・智証大師作の観音像を奉安する
臨済宗・西江寺(せいごうじ)(今津町藺生(ゆう))には弁財天を。
布袋は天台真盛宗・玉泉寺(安曇川町田中)に、大黒天は曹洞宗・正傅寺(新旭町旭)に。
そして、寝小便や痔疾(じしつ)、婦人病など下(しも)の病に
御利益のある川裾宮唐崎神社(マキノ町知内浜)は恵比須を祀り、福禄寿は、樹齢1,000年といわれる
御神木の椎の古木や山桜の大樹の植わる阿志都弥(あしずみ)神社行過(ゆきすぎ)天満宮(今津町弘
川)に祀られている。
ところで、七福神――恵比須は、
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)との
間に産まれた最初の子である。手足が萎(な)えて、
三年経っても立てなかったため、葦の舟に乗せられ流されたが、難波に着いて祀られるようになった。
「おあしが出ない」のいいまわしから、商売繁盛の神。また、漁業神。
大黒天は古代インドの破壊神で、シヴァの化身であるマハーカーラ(魔訶迦羅)。
もともと鬼神だったのが、のちに仏教の守り神となり、最澄によって日本に伝えられた。
大国主命(おおくにぬしのみこと)と習合して食厨の神となる。
七福神唯一の女神、弁財天は、インドのサラスヴァティ川の神で、サンスクリットの発明者とされる。
音楽や弁舌の神として崇められた。のちに知恵と財宝の神となる。
毘沙門天はヒンズー教の魔神。仏教の守護神、
軍神・多聞天(たもんてん)として四天王の一人に数えられるようになってからは、戦勝の神。
福禄寿は道教の神で、名前のとおり、幸福と高禄(財)と長寿の三神を兼ねる1,000年生きるとされる鶴を従えている。
寿老人は、福禄寿の同神異体である。2,000年生きた鹿、玄鹿を従える、長寿の神。
布袋は、中国・浙江(せっこう)省にあった四明山岳林寺の禅僧、
契此(かいし)(九一七年没)の呼び名。
布袋和尚は大きな袋に日用品を入れて、どこへでも出歩き、ものごとにこだわらない人だった。
吉凶の占いを得意とし、子どもたちにもやさしく法を説いたという。弥勒菩薩の化身といわれた福徳の神。
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