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三井の晩鐘

三井の晩鐘


大晦日、大勢の善男善女で賑わった除夜の鐘。一般には近江八景の「三井の晩鐘」として知られるこの梵鐘は、 「天下の三銘鐘」の一つにも数えられています。 姿の立派な宇治平等院の鐘、由緒の正しい高雄神護寺と、音色の美しさで選ばれた三井寺。 つまり、三井の晩鐘は、日本一の響きであると認められているのです。


耳を澄ますと、この銘鐘、ドレミの「ラ」の音の、四分の一ほど低い音で鳴り響いています。 西洋の音楽がド(C)の音を基準音とするのに対して、東洋ではラ(A)が基本になります。 永い梵鐘づくりの経験を経て、鐘の形や大きさ、厚さ、銅の配合といったものから、 美しいラの音が出るように完成させたのかもしれません。


  銘鐘、三井の晩鐘
銘鐘、三井の晩鐘
三井の晩鐘には、哀しい民話が伝わります。


村の子どもらにイジメられる一匹の蛇を助けたことで、 里の漁師は竜宮の王女をめとることになります。 間もなく、二人の間には子どもが産まれますが、 自分が竜女であることを知られた女は、琵琶湖底に呼び戻されてしまいます。 残された子どもは母親を恋しがり、毎日、激しく泣き叫びます。 でも母親にもらった目玉をなめると、不思議と、泣きやむのです。 しかし、その目玉も、やがて小さくなり、ついに竜女の両方の目玉はなめ尽くされてしまいました。 盲(めいし)になった竜女は、漁師に、三井寺の鐘をついて、 二人が達者でいることを知らせてくれるように頼みます。 鐘が湖に響くのを聴いて、竜女は心安らがせたといいます。


  三橋節子/画「三井の晩鐘」
三橋節子/画「三井の晩鐘」
梵鐘は、慶長七年(1602)四月二十一日、当時の三井寺長吏、第百三十七代道澄師の発願によって、 「弁慶の引き摺り鐘」(奈良時代作)を模鋳したものです。 その古鐘にも湖底の竜宮にまつわる伝承があって、もともと、竜族が竜宮に秘蔵していた鐘を、 竜王を悩ませる三上山の大ムカデを退治したお礼に、俵藤太秀郷が贈られたものだというのです。


近江の昔話に見られる特徴の一つとして、異界の者が土地の者との間に子どもを宿すことが上げられます。 たとえば、「余呉の天女」では、全国各地に伝わる羽衣伝説の中でも、多分、ここだけが、 天女が子どもを設けるのです。 そして、現在、桐畑性を名乗る人たちはみんな、この天女と、羽衣を得た桐畑太夫との間に 生れた子どもの子孫だと信じていいるのです。


  三橋節子/画「余呉の天女」
三橋節子/画「余呉の天女」
すれば、三井の晩鐘の音(ね)を聴いて、何かしら、心静まり、懐かしい気持ちを抱く人は、 ひょっとすると、竜女の血を引く人かもしれませんね。






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