第二十九番札所 青葉山 松尾寺
本日の霊場めぐりは、京都府の日本海側に位置する第二十九番「成相寺」と第二十九番「松尾寺」。もともと別の日に取材を予定していたが、悪天候のため延期となった。再設定されたこの日も、朝からやや心配な空模様だ。「大丈夫べん。てるてる坊主を吊るしてきたべん」。古典的な解決策に自信満々なべんべん。坊主が坊主を吊るすとはやや滑稽な気もするが、雨が降らなければ何だっていい。べんべんの巨体がすっぽり収まる傘などどこにもないのだ。
まずは、第二十九番「青葉山 松尾寺(まつのおでら)」へ。高速を降りたところでついに雨が降り始めてしまったが、寺に着くころにはすっかり止んでくれた。「言った通りべん」てるてるパワーかどうかはともかく、無事取材はできそうだ。
車を降りて石段をのぼると、仁王門の右手に紅梅、左手に白梅が満開の花をつけている。さっそく最初の写真撮影。この日は朝から雪が降ったらしく、庭にも屋根にも雪が積もっている。三月末とはいえ、日本海側はまだ冬模様だ。べんべんは、さきほどの雨で雪解け水が滴り落ちる仁王門をくぐり、まずは本堂へと向かった。
札所唯一の馬頭観音
松尾寺は、京都府舞鶴市と福井県との境にある青葉山の中腹に位置する。唐の僧・威光上人は、その美しさから「若狭富士」とも称されるこの山を見て中国の馬耳山(まいさん)を想起し、登山して松の大樹の下で法華経を唱えた。すると馬頭観音が出現したので、その姿を刻んで草庵に安置したのが寺の始まりと伝えられる。寺の名は、観音が現れた松にちなんでいる。
御本尊「座像馬頭観世音菩薩」は札所中唯一の馬頭観音で、六道のうち牛や馬の住む畜生道を救うとされることから、農耕や牛馬畜産、車馬交通の守り神として広く信仰を集めている。競馬関係者も訪れるそう。「べんべんは何道べん?」と、べんべんが素朴な疑問を投げかけてくる。そういえば、鐘で弁慶で亀のべんべんはいったい何道に属しているのだろう。よくわからないのでさりげなく聞き流し、参拝に向かった。
青葉山と杉の木
参拝を終えて回廊に出ると、本堂西側の広場に杉の巨木が立っている。ほかの木よりも幹がしっかりして背もひときわ高く、空に向かってまっすぐに伸びる大迫力の杉だ。職員さんの話によれば、樹齢は七百年を超えるという。驚く取材班の後ろで、べんべんは「まだまだべん」と謎の上から目線。そういえば、べんべんは八百年以上生きているのだった。「あっちの杉は樹齢九百年です」と、少し離れたところにある二股に分かれた大杉をさして職員さんが続ける。「……なかなかやるべん」よくわからないところで負けず嫌いなべんべんである。
青葉山には、約二万年前の氷河期を生き延びた希少な杉の子孫が群生しているという。境内でも、多くの樹木が大切に守られていた。
べんべんと金剛力士像
続いて、文化財が展示されている宝物殿へ。今日は特別に、通常撮影不可の金剛力士像とべんべんの記念写真を撮らせてくださるというのだ。中へ入ると、迫力満点の仁王さまが二体並んでいる。舞鶴市指定文化財で、鎌倉時代作の優品として近年脚光を浴びている像である。「筋骨隆々べん。カッコいいべん!」粋な計らいに大喜びのべんべんはいそいそと二体の間に立ち、カメラに向かって笑顔を向ける。阿(あ)、吽(うん)、弁(べん)。珍妙な守護神トリオの誕生である。松尾寺の皆さん、ご協力有難うございました。
御朱印は本坊で
御朱印は、仁王門手前の道を左へ行ったつきあたりの本坊でもらうことができる。参拝と宝物殿の見学を終えたべんべんは、最後にここで御朱印を受けた。本坊を出ると、寺の関係者の皆さんが見送りに来てくださっている。べんべんはお子さんらと記念撮影をして、法螺貝を披露。晴れ間ものぞき、少し暖かくなってきた。やはりてるてるパワーは効いているのか。お別れの挨拶をした一行は車に乗り込み、寺をあとにした。
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