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第三十番札所 竹生島 宝厳寺

べんべんと行く西国三十三所霊場めぐり
御朱印

 取材の日の朝、集合時間よりも少し早く三井寺に到着した筆者は、桜が満開を迎えた境内を散策した。この季節、例年は一日一万人を超える参拝客で賑わう三井寺だが、今年は新型コロナウイルスの影響で七割ほどの人出に留まっているという。夜桜ライトアップも中止になってしまった。美しく咲き誇る桜の花を眺めていると、人類が日々命がけの闘いを続けていることなど嘘のように思えてくるのだが。

 寺務所に着くと、玄関前でべんべんがスタイリッシュな美女と談笑している。彼女か?と思ってこっそり迂回しようとしたところ、べんべんに呼び止められた。「あ、おはようべん。こちら観音画家の木綿花(ゆうか)さんべん。一緒に竹生島に行くべん」。鎌倉を拠点に活動する木綿花さんは、三井寺で開催されている『観音の彩光』展のため大津に滞在中とのことだった。というわけで、今回はべんべん、木綿花さん、取材班で二台の車に分乗しての霊場めぐりとなった。目指すは滋賀県長浜市の第三十番札所「竹生島 宝厳寺」。琵琶湖に浮かぶ島に建つ観音霊場である。

べんべん、荷物になる

 竹生島へは、湖西の今津港、湖東の彦根港、湖北の長浜港のいずれかから観光船に乗って行くことができる。べんべん一行は今津港からのクルーズを選択。最近改築されたばかりの待合所でチケットを買い、少し待つと船が到着した。今年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』の関連企画か、坂本城主・明智光秀の家紋「水色桔梗」があしらわれた特別仕様になっている。

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いざ乗船、竹生島へ

早速乗り込もうとするが、べんべんは身体が大きすぎて客室の入り口を通ることができない。仕方がないので船尾の荷物置きスペースに乗せて頂くことにした。「寂しいけど、ここで大人しくしてるべん」。滅多にない船旅なので木綿花さんとタイタニックごっこでもお願いしたいところだったが、残念無念。べんべん以外のメンバーは、二階のオープンデッキに出て琵琶湖の風景を眺めたりなどしながら二十分ほどの短い船 旅を楽しんだ。

武将の船に囲まれて

 竹生島港に到着すると、宝厳寺住職・峰覚雄さんの奥様、裕美さんが出迎えてくださった。港から寺社が建ち並ぶ山の方を見上げると、あちこちに桜が咲いているのが見える。例年ならこの季節は観光客でいっぱいになるそうだが、こちらも新型コロナの影響でかなり人出が減っているとのこと。せっかくの光秀仕様の船も何だかもったいない。

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竹生島港の「琵琶湖周航の歌」記念碑

「これ、井伊直政公のことべん?」と、べんべんが港に停泊しているもう一つの観光船を指して言う。赤と黒の船体に金文字で「直政」と書かれている。彦根港から出ている船で、大河ドラマ『おんな城主 直虎』放映時に造られたとのこと。港が戦国武将だらけで物々しいが、竹生島は武将たちにも愛された島だ。大河特需に遠慮なく乗っかって行くスタイルの琵琶湖観光業界、その逞しさでこの難局をなんとか乗り切ってほしい。

神を斎く島

 竹生島は長浜市の沖合に浮かぶ、琵琶湖で二番目に大きな島である。島全体が国指定の名勝・史跡で民家は一軒もなく、神社と寺だけが静かに佇む。島の名前は「神を斎く(いつく=大切に祀る)島」の「いつくしま」が「つくぶすま」「ちくぶしま」と変じたものと伝えられる。

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 古来、湖を船で行く人々から水神として崇められていたところ、まずは神道と結びつき浅井比売命が祀られるようになった。奈良時代になると仏教が入り、神亀元(七二四)年には行基上人が宝厳寺を創建。行基は自刻の弁才天を御本尊として本堂に安置し、翌年には観音堂を建立したという。弁才天が祀られたのは、インド仏教の水神「サラスヴァティー」(日本でいう弁財天)が島の水神である浅井比売命と結びついたからではないかと考えられている。平安時代に入ると、弁天信仰と観音信仰が双方とも高まったことから広く信仰を集めるようになった。神と仏、弁天様と観音様が同時に祀られる、豊かな信仰に満ちた霊島である。

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新型コロナウイルスの影響で参詣者も少なめな境内

 鳥居をくぐると、傾斜のきつい石段が遠くまで伸びている。参拝者が祈りを捧げながら上ったことから「祈りの石段」と呼ばれているそうで、その数百六十五段。「結婚式の時、白無垢でこの石段を上ったんですよ」と、〇〇さん。「負けてられないべん!」最近の取材でエスカレーターを使うなどして石段上りを華麗にスルーしてきたべんべんが久々にやる気を出している。巨大な足を幅の狭い石段に慎重に乗せながら、まずは弁天様が鎮座する本堂へと向かった。

日本三大弁才天

 本堂の弁才天堂には、宝厳寺の御本尊「弁才天像」が祀られる。竹生島の弁才天は江島神社、厳島神社と並ぶ日本三大弁才天の一つ。日本で最初に弁才天信仰が根付いたのは竹生島で、江島と厳島の弁才天は竹生島の影響を受けて勧請されたものともいわれる。

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べんべんは御本尊に手を合わせ、お経を上げ、法螺貝を吹き鳴らす。本堂前の納経所では、「大弁才天」と「大悲殿」の二種類の御朱印を頂くことができる。べんべんは西国巡礼の証「大悲殿」の御朱印を頂いてから観音堂へ向かった。

 観音堂へ行く道の途中には、平成十二年に約三五〇年ぶりに再建されたという美しい三重塔や、貴重な寺宝の数々が収蔵された宝物殿がある。宝物殿の中央に展示されている『面向不背の玉』は必見。四方どこから見てもお釈迦様が正面を向いて見える不思議な玉で、興福寺に納められていたものがなぜかこの宝厳寺にあるという。参拝の折にはぜひ立ち寄ってご覧になってはいかがだろうか。

落慶間近の観音堂

 宝物殿を出て桜並木の石段を下りていくと、色鮮やかな建物が見えてくる。国宝の唐門と、重要文化財の観音堂である。慶長八(一六〇三)年ごろ、豊臣秀頼が父・秀吉の眠る京都の豊国廟から移築したもので、豪華絢爛な桃山様式の特徴がよく表れているという。長年の風雨により色褪せていたそうだが、現在は改修工事が施されてもとの極彩色が蘇り、あと少しで完成というところまで来ている。

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修理も終わり、絢爛な彩色が復元された国宝・唐門

 堂内は、青や緑、赤、金色に彩られた動植物の彫刻で華やかに装飾されている。色とりどりの狛犬や雉子、鹿、牡丹の花が舞い踊る様はまさに豪華絢爛。べんべんは御本尊「千手千眼観世音菩薩」に手を合わせ、再びお経を上げ、法螺貝を吹く。観音画家の木綿花さんも長いこと手を合わせている。

 五月には落慶法要が行われ観音様も特別に御開帳されるとのことだが、このご時世無事に執り行われることを祈るばかりである。

べんべんチャレンジ〜かわらけ投げ(再)〜

 観音堂を出て重要文化財「舟廊下」を通り、国宝「都久夫須麻神社 本殿」へ。神様に手を合わせて階段を降りていくと、べんべんが正面の「龍神拝所」に掲げられた看板をじっと見つめている。

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重文の渡廊(船廊)を渡り、都久夫須麻神社へ参拝

「かわらけ投げべん……!」そう、ちょうど一年前に宮津の成相寺でチャレンジし、見事失敗したあのかわらけ投げである。再び出逢ってしまったべんべん、今度もダイエット成功を願って挑戦するのだろうか?

 「今はそれどころじゃないべん。新型コロナの収束を祈願するべん!」

 べんべんの目が燃えている。まるで星飛雄馬だ。このコーナーでべんべんの世俗にまみれた部分ばかりを紹介してきたせいで忘れていたが、べんべんは人知れず日々修行に励み、三井寺PRのために身を粉にして働き、時折子猫を拾ってはSNSで里親を募集する、そんな頑張り屋さんで慈愛に満ちた正真正銘の僧侶なのだ。きっとみんなの願いをかわらけに乗せて届けてくれるに違いない。頼むぞべんべん!

「ベ────────ん!」

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島の南端に突き出た岩場の
「宮崎鳥居」目がけてかわらけ投げ

 謎の奇声と共に、べんべんの手から放たれた白いかわらけが宙を舞う。一度大きく右に逸れたかと思われたが、大きな弧を描いて左へ戻り、目標の鳥居をフラフラと抜けていった。「あ、入った」正直それほど期待していなかった取材班から拍子抜けしたような驚きの声が上がる。「やったべん!」と、飛び上がって喜ぶべんべん。やはり邪念なき願いはきちんと聞き届けられるようだ。べんべんの祈りが現実のものとなることを願ってやまない。

うな重、迷いなき大盛り

 参拝を終えたべんべん一行は港から再び船に乗り、竹生島を後にした。船の中から港を振り返ると、裕美さんが見えなくなるまで手を振ってくださっている。丁寧なご案内に感謝感激である。

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今津港の「琵琶湖周航の歌」記念碑

 今津港に到着した一行は、昼食のため「近江今津 西友」へ。「せいゆう」ではなく「にしとも」。べんべんは一分の迷いもなくうな重の大盛りを注文し、瞬く間に平げた。普通盛りを完食するにも四苦八苦していたスレンダーな木綿花さんとは対照的である。「多いならべんべんが半分食べてあげたのに。言ってくれなきゃべん」と木綿花さんに微笑みかけるべんべん。ダイエットはどうした、と問い質したいところだが、かわらけ投げも成功したことだし今日は黙っておこう。

 この後、一行は「今津ヴォーリズ資料館」「琵琶湖周航の歌資料館」など今津の名所を訪れ、最後は全国にある白髭神社の総本社とされる高島市の「白髭神社」で参拝し、湖西巡りを満喫した。次の取材も無事にできますように。

ルート図




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