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第三十三番札所 谷汲山 華厳寺

べんべんと行く西国三十三所霊場めぐり
御朱印

二〇一五年からおよそ五年に亘って続いてきたこの連載も、今号でいよいよ最終回となった。最後の札所は岐阜県揖斐郡揖斐川町の第三十三番霊場「谷汲山 華厳寺」。二府五県、総距離約一、〇〇〇kmの旅を締めくくる「満願霊場」である。

最終回ということでべんべんも感慨ひとしおかと思われたが、特にいつもと変わらない様子で寺務所のテーブルにつき、モーニングコーヒーを飲んでいた。「夏はアイスコーヒーに限るべん」新型コロナによる自粛生活の中で四月五月があっという間に過ぎ去り、季節はいつの間にか夏。今日の気温は三十度を超えるとの予報が出ている。最後の巡礼、べんべんが元気に終えられることを祈るばかりである。

うなぎに目がない広報僧

いつもは参拝を終えてから近隣の観光名所を巡るべんべん一行だが、今回はスケジュールの都合上先に名所へ行くことにした。訪れたのは「中山道赤坂宿」。三井寺から名神高速道路を東へ約一時間半、華厳寺の南約十六kmの場所に位置する旧宿場町である。一行は江戸時代の住宅群を巡り、周辺の歴史資料や近くの金生山(かなぶやま−通称:きんしょうざん)で採掘された海底動物の化石等を見学。二億五千年ほど前、この周辺はまだ海の底だったらしい。

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中山道から北へと分かれる谷汲街道との分岐点には
「左たにぐみ道」と刻まれた天和2年(1682)の
石灯籠が残り、旧清水家住宅は、旅人が行き交った
往時の賑わいを偲ばせる。

赤坂宿を出るとちょうどお昼時になったので、揖斐川町のうなぎ料理店「八千代」へ。前回に続いてのうなぎ料理。べんべんはうなぎに目がないようだ。しかし、車にめっぽう弱い筆者はこの日少々酔ってしまい、何も食べられそうになかったので近くの喫茶店で待機することに。注文したトマトジュースをちびちび飲みながら、筆者は大盛りのうな重を勢いよく食べているであろうべんべんの姿を想像した。毎度ハイカロリーなメニューを大盛りで食すべんべん、彼は本当にダイエットを望んでいるのだろうか。これではまるで私の方が必死でダイエットに励んでいるかのようだ。鼻歌まじりで店を出てきた満腹のべんべんとともに一行は再び車に乗り込み、いよいよ目的地の華厳寺へと向かった。

おめでとう、べんべん〜満願達成セレモニー〜

華厳寺の参道に入ると、両脇に多数の飲食店や土産物屋が立ち並び、のぼりや看板には「満願御膳」「満願成就そばうどん」などの文字が躍る。西国巡礼最後の寺らしく、参道からすでに満願達成への祝福感で満ち溢れている。長い旅路の果てにここへ辿り着いた巡礼者たちは、この光景を眺めながらこれまでの道のりをしみじみと振り返り、特別な感慨をおぼえるに違いない。

境内に到着すると、法被を着た揖斐川町観光協会谷汲支部の皆さんが「おめでとう べんべん/祝 西国観音巡礼満願達成!」と書かれた大きなパネルを手に待機している。なんと、べんべんのためにお祝いセレモニーを開いてくださるというのだ。この日のためにわざわざ駆けつけてくれた先達さんがべんべんに「おめでとう」と声をかけてくださる。中日新聞の記者さんまで来ている。「大歓迎べん。嬉しいべん!」想像以上の一大祝福ムードにべんべんもびっくり。三井寺一行も全員緑色のべんべんジャンパーを着用し、正装で本番に備えた。

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山門にて記念撮影。いのりちゃんの左隣が揖斐川町長の富田和弘さん。

セレモニー開始時刻の午後一時。仁王門前で待機するべんべんのもとに、おいずる姿の大きな女の子が現れた。華厳寺のマスコットキャラクター・いのりちゃんである。二年前に三井寺へ来てくれて以来、ずっと仲良くしてきた大切な友達だ。そして、べんべんよりも後に西国巡礼を始めたにもかかわらず、あっという間に追い越して先に満願を達成した先達でもある。いのりちゃんがべんべんに歩み寄りお祝いのプレゼントを手渡すと、見守っていた多数の参拝客から大きな拍手が沸き起こる。五年にわたる長い旅を締めくくる、感動のフィナーレである。べんべんの目に、うっすら涙が滲んでいるような気がする。

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山門をくぐりいっしょに本堂へ。

二〇一八年から途中参加した筆者にも、なぜか五年分の感動が湧き上がってくる。パネルを囲み、べんべん、いのりちゃん、観光協会の皆さん、三井寺関係者、先達さんらと、仁王門前で記念撮影。参拝客の皆さんも入れ替わり立ち替わり撮影に加わる。五年間、三井寺PRのため、西国三十三所一三〇〇年PRのため、ついでにご当地グルメを楽しむために、身を粉にして働いてきたべんべん。マスコットとしては、いのりちゃんに続き二体目の偉業達成である。おめでとう、べんべん。仁王門前は、しばし賑やか なお祝いムードに包まれた。

西国巡礼結願の寺

「谷汲山 華厳寺」は、岐阜県揖斐郡揖斐川町の第三十三番霊場。西国三十三所の中で唯一近畿圏以外に位置する札所である。創建は延暦十七(七九八)年。奥州会津の大口大領が夢告によって得た霊木で京の仏師に十一面観音像を作らせ京から会津に持ち帰ろうとしていたところ、観音像が自ら歩き出し、美濃国赤坂周辺で北へ方角を変え、谷汲の地で歩みを止め一歩も動かなくなったという。

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三十三段の石段を登った高台に建つ満願堂。
「満願」の文字の刻まれた狸の石像が並ぶ。

大領はここを結縁の地と見定め、山中で修行していた豊然上人とともに堂宇を建て観音像を祀った。その後、この話を伝え聞いた醍醐天皇が谷から湧き出る油を灯明に用いたことから「谷汲山」の山号を、また、観音像に華厳経が書写されていたことから「華厳寺」の寺号をそれぞれ賜ったという。西国巡礼中興の祖とされる花山法皇により第三十三番の満願所と定められ、現在に至るまで結縁・満願の寺として人々の厚い信仰を集めている。

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本堂の背後にある笈摺堂には、巡礼を終えた人々が納めた笈摺が積み上げられており、
「おいづる」にちなんで折り鶴、千羽鶴を奉納する人が絶えない。

セレモニーを終えたべんべんは、最後の参拝のため本堂へ向かう。いのりちゃんや観光協会の皆さんが引き続き付き添ってくださる。本堂前に到着すると、ご住職の久保寺美好さんが出迎えてくださり、再び記念撮影。祝福に次ぐ祝福に喜びが尽きない。

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本堂前には「精進落としの鯉」があり、本来ならこれを撫でて手を舐めることで精進の日々から俗界に戻るそうだが、べんべんは撮影や取材に忙しく対応する中でこの儀式をすっかり忘れていた。写真だけは撮影したので、巡礼の最後には忘れずこの鯉で精進落としをして頂きたい。

極楽浄土への通行手形
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堂内に入ったべんべんは、御本尊の「十一面観世音菩薩」に手を合わせ、お経を上げ、法螺貝を吹く。べんべんの法螺貝に、参拝客から拍手が沸き起こる。

続いて、最後の御朱印を頂きに納経所へ。御朱印は「大悲殿」「満願堂」「笈摺堂」の三種類で、それぞれ「現在」「過去」「未来」を表しているという。これで全ての御朱印が揃った。三十三所の御朱印は閻魔大王から授かった三十三の宝印が起源とされ、全て揃えば極楽浄土への通行手形になるという。「これでべんべんも極楽浄土に行けるべん」と、御朱印帳をしみじみと眺めるべんべん。八百年以上も生き続けているべんべんが極楽浄土へ行くのは一体いつになるのだろう、と少々疑問に思ったのだが、おめでたいことだしあまり深くは考えないことにした。

本堂を出たべんべんは、さらに奥へと進み「笈摺堂」「満願堂」を参拝。観音様への満願の報告を終え、これで本当に巡礼完了である。仁王門まで戻る頃には暑さと移動と撮影対応等々でさすがに疲労困憊のべんべんだったが、いのりちゃんは最後までピンピンしていた。恐るべき持久力。やはり重量の差は大きいのかもしれない。

丁寧にお祝いとご案内をしてくださった皆さま、本当にありがとうございました。そしてべんべん、五年間本当にお疲れさまでした。

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べんべん、中日新聞に載る
べんべんと行く西国三十三所霊場めぐり

地元の岐阜新聞では大きく報道された。

満願達成翌日の六月二十八日、中日新聞に「大津・三井寺のキャラ『べんべん』巡礼達成 谷汲山華厳寺を訪れ」と題した記事が掲載された。当日の様子や関係者のコメント等が写真付きで紹介されている。フィナーレに花を添える嬉しい記事だが、筆者はべんべんのコメントを見て衝撃を受けた。語尾に「べん」がついていないのだ。よそ行きモードになると口調が変わってしまうのだろうか。コメントをとる場面を見逃したことが悔やまれてならない。

満願達成記念 べんべん特別インタビュー

満願達成おめでとうございます。
今の率直な気持ちは?

疲れたべん。今日はさすがに暑くて二回くらい倒れそうだったけど、なんとか持ちこたえたべん。でも、いのりちゃんやみんながお祝いしてくれて嬉しかったべん。

─最も印象に残ったお寺は?

それは決められないべん。どのお寺もそれぞれに魅力があったべん。でも、敢えて言うなら今日の華厳寺べん。手厚い祝福をしてくれたご恩は一生忘れないべん。

べんべんにとって西国巡りとは?

根性べん。

大きな目標を達成しましたが、今後何か新しく達成したいことは?

ダイエットべん。

本気ですか。

どういう意味べん。

これから西国巡礼を考えている皆さんにアドバイスがあれば。

札所の近くでランチがおいしいお店を知りたい人はべんべんに聞くといいべん。うな重、しじみ飯、海鮮丼、いろいろあるべん。逆に、新しくおいしいものを見つけたらべんべんに教えてほしいべん。お土産としてプレゼントしてくれるのも大歓迎べん。

やっぱり本気じゃないですよね?

え?

では最後に、読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

五年間、応援してくれてどうもありがとうべん。おかげさまで満願達成できたべん。べんべんはこれからもいろんなところに登場するべん。どこかで見かけたら気軽に声をかけてほしいべん。三井寺広報のためにこれからも頑張るべん。どうぞよろしくべん!

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べんべんの満願に三十三所特認先達・一橋楓果ちゃんも駆けつけてくれた。

〈終わり〉

ルート図




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