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現代のように科学文明が進んだ世の中になっても、自然と親しむことへの人気は一向に衰えをみせません。 休日ともなれば人々は山へ川へと足を運びます。 しかし、自然はいつも美しく人々を包み込むだけではありません。 時には荒々しく人命を失わせるほどの残酷な姿をわれわれの前に顕わします。 大自然はわれわれの築いてきた文化や世界とは全く異なった「異界」なのです。 そこでは人間の論理は通用しません。 古代の人々は、そこに神の顕現を見、畏怖の感情を育んできました。 世界中の宗教は自然の神聖性を崇めることから生まれたと言っても過言ではないかも知れません。


智証大師と修験道

修験道とは、こうした日本古来の山岳信仰が仏教に取り入れられたもので、 日本各地の霊山を修行の場として、過酷な苦行を行い、 超人的な験力をたくわえ衆生の救済を目指す実践的な宗教です。 なかでも多くの霊山の中心となったのが修験道の開祖と仰がれる役行者(役小角)が開かれた 熊野から吉野にいたる大峰山系です。

三井寺の開祖・智証大師は、役行者のご遺法を慕い、 承和十二年(八四五)御年三十二歳のときに那智の滝に一千日の参篭修行をされ、 役行者の縁起相伝をお受けになり、熊野から大峰の入峰を遂げられました。 ここに円・密の二教に修験道を加えた天台寺門宗独特の三道融会の教風を立てられたのです。

後に三井寺の修験道は本山派と称され、全国津々浦々に多くの修験者を擁して目覚ましい興隆をみました。




現代人にとって山に登ぼりきれいな空気を吸い身心をリフレッシュすることは何より大切なことです。 ひたすら山に登り、人間にとって「異界」である自然の懐に抱かれることによってそこに生きる動物や虫、 樹木や草花と同じ一つの生命として大自然のなかに生きていることが自然に体得されるようになるのです。







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