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仏の三十二相

「仏像・仏様」と総括して呼んでいるものも実は四種類の尊像を指して言われているものなのです。 曰く如来部、菩薩部、明王部、天部の諸尊。

菩薩、明王、天部につきましては、またの機会に譲ることとして、 今回は、如来部の釈迦像について話を進めていくことにいたします。 仏像制作の嚆矢は釈迦如来像であったのですから。

釈尊入滅後の初期仏教美術におきましては、 釈尊のお姿は菩提樹や仏足跡、法輪、仏塔などの象徴的なもによって表現され、 けっして人間的なお姿では表わされませんでした。

ところが、二世紀になって、ガンダーラ地方(西北インド)とマトゥラー地方(中インド)で、 相次いで仏像の成立をみます。 つまり、釈尊入滅後およそ500年間、仏像は存在しなかったのです。 そして、最初に造られたのが釈迦如来像なのです。

釈尊を偶像として表わす場合、決 められた約束事があります。それが 仏の三十二相と言われるものです。

一説ではゴウタマ・シッダルタ太子が覚悟されて仏陀となられたとき、 それまでの人間の姿に加えて三十二箇所に瑞相が表れたからだと言われますが、 後の仏教徒が人間釈尊を畏敬の念をもって、我々衆生には表れない瑞相を偶像上に具備させたものでしょう。

しかし、三十二相の中には仏像制作上、表現できないものも幾つかあります。 その一つに「長舌相(ちょうぜつそう)」があって、釈尊の舌は広くて長く、 髪の生え際まで届き、自分の顔を覆い隠せる程だと。 また、「四十歯相(しじゅうしそう)」や「歯斉相(しせいそう)」では、 40本の歯(我々より12本多い)が全て同じ大きさで、しかも真っ白だと。 あるいは、「毛上向相(もうじょうこうそう)」は、体毛が全て上向きに生えているなど。

いまだかつて「あかんべー」をされていたり、 「ニィー」と白い歯をみせて微笑んでおられる釈迦如来像にはお目にかかったことがありません。 ましてや「毛むくじゃら」の御像にも。

そこで、外見上表現できる瑞相は決り事ですから表現されます。 まず「金色相(こんじきそう)」覚悟の瞬間、身体が金色に輝いたことから。 「耳朶環状相(じだかんじょうそう)」耳たぶが大きくてしかも穴があいている。 「手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう)」水鳥のように指の付け根に水掻きがある。 「肉髻相(にっけいそう)」頭が重ね餅のように二段になっている。 「長指相(ちょうしそう)」手と足の指が長くてかつ繊細である。 「正立手摩膝相(しょうりつしゅましつそう)」気をつけの姿勢をとると、指先が膝まで届く。 「足下安平立相(そっかあんぺいりつそう)」足の裏が平で土踏まずがない。 「白毫相(びゃくごうそう)」眉間に白い毛が渦をまいている。等々。

さて、あなたはどれだけ釈尊に近いでしょうか。




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