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恩 愛

母親と手をつないで歩くのは何年振りのことだったでしょうか。 私が小学校へ入学するときには母親に手を引かれて行ったことは記憶に残っておりますし、 また、それから以後もおそらく低学年の間は、そうして買い物にも付いて行ったことでしょう。 3人兄弟の末っ子として生まれた私は、 姉や兄に比べて甘やかされて育てられたと後年になって姉が言っておりました。

あれから40年余が経ち、今では母親の孫も成人と高校3年生になっています。 若かった母親も年老いて、艶々した顔や手は大小の皺で覆われ、 一周りも二周りも小さくなってしまいました。 四苦(生・老・病・死)に言うところの「老い」からは何人も逃れる事はできません。

3人の子供を育てあげた母親は、どちらかと言えば物静かな人でした。 昨年、つまづいて転倒したときに右二の腕を骨折してしまい、 接合手術の末、3ヶ月の入院生活とリハビリが始まりました。 入院中検査の結果、胃に腫瘍があることが判り、3分の2を切除する手術を余儀なくされました。 高齢者にとって2度の外科手術は体力的、精神的にも大変な負担です。 出来うることなればそっとしておいてやりたかったのですが、 このまま放置すれば余命は1年と聞かされ、相談の結果、母親には手術を受けてもらうことにいたしました。 さらに1ヶ月余りの入院生活が続きました。

この間、毎晩のように病院へ参りました。私が行けないときは妻が様子を見に行ってくれました。 妻には大変よく看病してくれたと感謝いたしております。 長い入院生活のため、母親の脚力は衰え、廊下の手摺りを頼りとするか、 あるいは手を引いてやらないと歩行が困難な状態でした。

退院をしても状況は変わりませんでした。母親ひとりにはしておけません。 姉も私も幸い近くにおりますので、姉と妻が交代で食事を作り、 私が運んで2人で摂り、泊まって帰るという二重生活をしばらく続けました。

「父母恩重経」に父母に十種の恩徳ありと説かれています。

また、「父母病あらば、牀邊を離れず、親しく自ら看護せよ」、 「孝養の一事は、在家出家の別あることなし」とも説かれています。

さらに、得度を受けるときも、釈迦如来に「父母の恩」に対し五体投地の礼をもって3度礼拝をいたします。

父親はすでに15年前鬼籍の人となっておりますので、 少しでも恩に報えるのは哀しいかな母親ひとりとなってしまったのですから。




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