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不惜身命

平成の大横綱貴乃花が一月場所途中で引退を表明しました。代わって大関朝青龍が場所後横綱に推挙され、相撲界も大きな変革期を迎えた一月場所でした。しかも、6階級あるうち、5階級まで外国出身力士が優勝という前代未聞の一月場所でもありました。

伯父は横綱若乃花、父は大関貴ノ花。兄若花田とともに角界に入門した貴花田兄弟は順調に出世を重ねました。それは華々しい「若貴時代」の幕開けでもありました。しかし、いくら血統が良くても実力がすべての相撲界。そんな厳しい世界にあってなお兄弟そろって頂点を極めた若貴の想像を絶する精進努力たるや、いかばかりであったのだろうか。

平成7年一月場所を優勝で飾った大関貴乃花は横綱に推挙されました。相撲協会からの使者を迎え、横綱に推挙されたことへの返礼口上に「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」という一言がありました。記憶されている方も多いのではないでしょうか。この言葉を新横綱に提言したのは、俳優の緒方拳氏だということを最近のテレビ番組で知りました。不惜身命とは文字通り「身命を惜しまず」ということであって、貴乃花は命を投げ打って横綱の重責を全うし、相撲道に精進しますと横綱昇進への決意をこの言葉の中に込めて語ったに違いありません。

さて、「不惜身命」は『法華経』勧持品第十三に、

読誦此経 持説書写 種種供養
不惜身命 爾時衆中 五百阿羅漢
得受記者 白佛言世尊 我等亦自誓願 於異国土 廣説此経
(この経を読誦し、持ち、説き、書写して、種種に供養し、身命をも惜しまざるべし。 〈後略〉坂本幸男訳―岩波文庫)

とあり、薬王菩薩、大楽説(だいぎょうせつ)菩薩が釈尊に対して、後の世にもこの経(法華経)を身命を捨てて宣揚いたしますと述べ、五百人の阿羅漢たちも他の世界においてもこの経を広めますと、釈尊に誓っています。

また、『法華経』如来寿量品第十六にも、

一心欲見佛 不自惜身命
時我及衆僧 倶出霊鷲山
(一心に仏を見たてまつらんと欲して、自ら身命を惜しまざれば、時にわれ及び衆僧は、倶に霊鷲山に出ずるなり。同前掲)

とあります。

平成13年五月場所千秋楽。前日に右膝半月板を損傷し、それをおして土俵に上がった横綱武蔵丸との一番。上手投げで勝って、22回目の優勝をものにした時に見せたあの仁王像の形相。これこそ横綱貴乃花にとって「不惜身命」を有言実行した大一番だったのではないでしょうか。




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