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種字(梵字)の御守 20数年振りに「サンタナ」のライブを聞きに大阪に出かけました。といっても、わかってくださる方の年齢は30代の後半から50半ばぐらいでしょうか。音楽のジャンルでいえばラテンロックということになります。
会場のフェスティバルホールには私と変わらないような年齢の男女が溢れていました。ほっとしたのと同時に、彼らもあの時の感動・興奮が忘れられなくて今日の日を待っていたのだろうなと思うと嬉しくなってきます。
やがてホールが暗くなり、開演を知らせるブザーが会場に低く響き渡ります。ステージの下手からカルロス・サンタナと7人のメンバーが登場し、用意されてあったギターをおもむろに取りあげ、仲間にちょっと合図をくれると同時に彼のギターが炸裂し、会場はいきなり頂点に達します。彼等が繰り出す強烈なラテンリズムは脳天を突き抜けるようであり、カルロス・サンタナが奏でるギターは官能的でさえありました。
サンタナだラテンロックだと、どこが「仏教豆百科」なのかとお叱りを受けそうです。
幸運にも最前列ほぼ中央の座席が取れまして、私からサンタナまでの距離はオーケストラピットの空白部を隔てて実に5メートルくらい。表情は勿論のこと、仲間との会話さえ聞こえてきます。もっとも何をいってるのかは別として。そんな至近距離だからこその大発見がありました。彼はステージ上に香を焚きしめ、精神の統一を図っているのです。そして何より驚いたのは、彼のギターのヘッド(弦を張るための糸巻がある部分。ギターの最上部)に種字が螺鈿で埋め込まれていたのです。しかもそれは(ボロン)。一字金輪(いちじきんりん)の種字なのです。中村元著『佛教語大辞典』には「大日如来が最初の三摩地(さまじ)に入って説いた真言。(ぼろん)の一字を人格化した五仏頂尊の一つ。最勝であるから金輪といい、東寺の長者でなければ修法できなかった」とあります。三摩地とは密教における悟りの境地のことです。金剛界大日如来をこれにあて、最高唯一の仏であるといわれます。
サンタナは公演のため世界各国を巡っているなか、おそらくアジアのどこかの都市で密教との出会いがあったのでしょう。それはもしかして日本かも知れません。そうであってほしい。 一字金輪の種字をあたかも自分の守り本尊のように付けたサンタナのギター。演奏中の彼の魂は一字金輪仏頂尊(大日如来)と交信し、同一化を成す。彼のギターから弾き出される大音響は仏の金言のように私の身体に沁み入りました。(梅村敏明)
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