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梵音具(五)
前号で梵音具は最終回としますと書きましたら、鈴は梵音具ではないのですかというご質問をいただきました。鈴は「すず」ではなく「れい」のことで、密教法具としての金剛鈴です。言われてみれば確かに、金剛鈴は密教行者が加持祈祷を行う際、オンバサラケンダウンの真言を唱え、左手に鈴を持ち、振鈴をして音を発し、諸尊を驚覚して歓喜せしめ、供養するための法具で、音が出る訳ですから、梵音具のひとつと言ってもいいかと思います。
大壇や護摩壇あるいは前机には、金剛盤を中心に火舎(かしゃ)、洒水器(しゃすいき)、六器が並べられます。金剛盤の中央に鈴(五鈷鈴)を置き、手前に五鈷杵、左に独鈷杵、右に三鈷杵を配します(写真T)。 金剛鈴の製造方法は磬と同じく、鋳型に溶かした銅を流し込んで造る鋳造と呼ばれる技法によって造られています。独鈷鈴、三鈷鈴、五鈷鈴、宝珠鈴、宝塔鈴の五種類があります。 音を発する部分を鈴身といいます。通形では飾り帯を2本から数本鈴身に廻しますが、四大明王や五大明王といった仏像を配したものや、種字(仏を表す梵字)を配したものもあります。その上部に、実際ここを指先で摘んで振鈴させる把(は)と呼ばれる部分があります。この部分には鬼目(きもく)や連弁の装飾を施します。さらにその上部に鈷と呼ばれる部分があり、尖った角が一つのものを独鈷鈴、三つのものを三鈷鈴、五つのものを五鈷鈴といい、宝珠がついたものを宝珠鈴、宝塔がついたものを宝塔鈴といいます(写真U)。これらを総称したものが金剛鈴です。 仏像や仏画で金剛鈴を持物としている諸尊には、千手観音菩薩、普賢延命菩薩、金剛夜叉明王、愛染明王等があります。 宗祖・智証大師円珍も唐から五鈷鈴を請来していることが目録により判りますが、残念ながら遺品は伝来しておりません。しかし、空海が請来した五鈷鈴(国宝・唐時代、東寺所蔵)や厳島神社所蔵の五鈷鈴(国宝・鎌倉時代)など優品がたくさん伝来しております。(梅村敏明) ・「仏教豆百科」一覧に戻る ・「教義の紹介」一覧に戻る |