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日本霊異記(二)

それでは蒐集されています説話の中からまず善因善果の話を紹介します。中巻に収められている「般若心経を敬い読んでいた女が、現実に閻魔王宮に行き、不思議なはたらきを現した話」と題された説話です(原文は全て漢文ですので、読み下し文、並びに現代語訳は講談社学術文庫『日本霊異記』中田祝夫訳を参照しました)。

聖武天皇(724~749)の時代、河内国(かわちのくに)(大阪府)に利苅(とかり)の優婆夷(うばい)(在家の女性仏教信者。因みに男性の仏教信者は優婆塞(うばそく)といいます)という女性がおりました。生まれつき心も清らかで、仏・法・僧の三宝を敬い、いつも般若心経を読むことを日課としていました。しかもお経を唱える声が大変美しく、僧や在俗の人たちに親しまれていました。

この優婆夷は病気でもなかったのですが、ある夜突然死んでしまいます。そして閻魔王宮に行きます。閻魔大王は優婆夷を見て立ち上がり、席を設け敷物を敷いて座らせてこういいました。「聞くところによると、そなたは美しい声で般若心経を読んでいるとか。わしもその読む声を聞きたい。そのためにちょっと呼んだのだ。聞かせてくれ」と。優婆夷の唱える心経を聞いた閻魔大王は涙を流して喜び、跪いて礼拝しました。優婆夷は三日間閻魔王宮で過ごしますが、大王より「遄(すみやか)に還(かへ)れ」とのことで王宮を出ると、門に黄色い衣を着た三人の者がいたのです。彼らは優婆夷を見て大変喜び、「以前ちょっとお目にかかっただけでした。この頃お会いできないので、恋しく思っておりました。ここで偶然お会いできますとは。速やかにお帰りなさい。私たちは三日後に諾楽(なら)(奈良)の京の東の市で必ずお会いしましょう」と聞くや生き返ったのです。

三日目の朝、東の市に行ってみるのですが、黄色い衣を着た人は来なかったのです。ただ身なりの卑しい者が「誰かお経を買わないか」と叫んでいるばかりです。優婆夷がそのお経を手に取り開いてみると、なんとそれは昔自分が書写した『梵網経(ぼんもうきょう)』二巻と『般若心経』一巻でした。それらは書写はしたけれども、供養をしないうちに盗難に遭ったものだったのです。盗人とわかりながらも「経の直(あたひ)、欲(おも)ふに幾何(いくばく)ぞ」と聞くと「巻別(まきごと)に銭五百文を欲(ねが)ふ」と答えた。

もうお解りのように、閻魔王宮の門で会った三人とは優婆夷が書写した三巻のお経であったのです。優婆夷は法会を設けて懇ろに供養し、仏法の因果を信じ、真心を込めて昼夜を問わず読誦したということです。「もし現在、善行を修め行う人がいるなら、その名は天上界に知れわたる」と。

(梅村敏明)



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