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日本霊異記

この書物の著者景戒(きょうかい)は8世紀後半から9世紀前半にかけて南都・薬師寺に籍を置いた僧侶です。しかし、景戒には妻子がありました。つまり、官僧(試験に合格し、国が認めた僧)ではなく、私度僧(自分は僧であると自称している僧)であったといわれております。生没の詳しいことも明らかではありません。

さて、その景戒が見聞きした不思議な現象を綴った著作が『日本霊異記(りょういき)』です。正式には『日本国現報善悪霊異記』といいます。日本で最初の仏教説話集でもあります。上巻・中巻・下巻の三巻よりなり、各巻それぞれに序があります。

上巻の序には仏教の伝来を記し、中巻の序には聖武天皇がいかに仏教を奉信し、仏教興隆に尽くされたかを記し、下巻の序には因果応報の理(ことわり)を述べています。説話を蒐集している年代は6世紀前半の雄略天皇の時代から9世紀前半の嵯峨天皇の時代、弘仁14(823)年までです。この著の題名の中にもありますように、現報善悪(報いとして現れる善と悪)、つまり、善因には善果、悪因には悪果というはっきりとした結果が現れるものだから、善い種を植えなければならないのだと強調するのです。

この世のすべての事象には必ず原因があって、それに応じた結果が現れるという因果律に支配されています。

井上智男は『仏教と現代文明』で「仏教では奇跡や偶然を絶対に認めない。何者かが存在するならば、それに対する原因は必ずある。原因なしに結果として存在するものは何者もない。これが仏教立場である」と断言しています。そして「多くの原因の中で、結果に近い原因を〈因〉といい、やや遠い関係にある原因を〈縁〉と呼びます。いうならば〈因〉が直接原因であり、〈縁〉が間接原因ということになります」といっています。

景戒自身が「私は聞くにまかせて、人々の口伝えの話を選び、善と悪とに類別して、不思議な話を書き留めた。この因果応報談集を作成したという功徳を、広く迷える人々に施し、皆もろともに西方の極楽浄土に生まれたいものである」と記して筆を置いています。

善因善果、悪因悪果の報いは明白であるにも関わらず、その実例を人々に示さなかったならば、間違った考えや行いを改めることもしないばかりか、仏法を信じる道へ導くことができないと思ったからです。

『日本霊異記』全三巻には百十六話の説話を納めています。次号より景戒が見聞きした因果応報の理を数篇紹介することにします。

(梅村敏明)



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