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壺中に在り
私が小学生の頃、母のお茶のお稽古に同席し、一緒に、お茶とお菓子をいただいたことがあります。
早く遊びに行きたそうな私の様子に、おじいさんの先生(野井其水先生でした!)は笑って、
すぐに、その場から解放して下さいました。
全く無関心だった私をよそに、お茶を楽しんできた母が、
私の住むマンションでのお稽古を始めてから、私とお茶の本当の出会いがやってきました。
あれから、三十年近く経っていました。
昔、感じていた窮屈そうなイメージとは異なり、そこには、ある種の、癒しにも似た雰囲気がありました。
しばし日常を離れ、自らを安んじる快い時の流れと空間の存在を知ったのです。
それぞれに、その別天地を楽しみ、清々しく帰っていかれる方々を見ているうちに、
その別天地は私自身の心の中にもあると気付きました。
修養とは程遠いながら、生活感あふれる我家でも「壺中に在り」とお茶を楽しむ今の私の姿に、
野井先生も苦笑いなさっていることでしょう。
三井古流煎茶道 大津分会 河本彰子
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