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「施茶」に心満たされて 路傍のコスモスが風と戯れ、懐かしい記憶を運んで来る。振り返れば、ここ数年の出来事は私にはとても大きい。母との別れ。自宅建て替え。個展開催。実家類焼。子供の結婚。様々なできごとを通して出会った人々の心の温もりは何ものにも代えがたい。自然の織りなす風景・人の営みから生まれる作品・人情の機微は今更ながら出会いと明日に向かって歩くことの大切さを示してくれる。三井古流煎茶道は精神の高揚を重んじ賢人の足跡を辿って「日々是好日」の生活をするように教え、お点前には「心」「行」「創」がある。受け止めた心を実践する一つの道が「施茶」ではなかろうか。先ほどまで見ず知らずの他人同士が「お茶をどうぞ召し上がれ」一煎のお茶を介して触れ合い、交わした言葉が後々まで双方の胸に残る。ようやく「施茶」の素晴らしさを判りかけてきた昨今であるが、間もなく来る今年度の「施茶」当番の日には心新たに「喫茶去」と言いたい。そしてこれからも一度限りの人生を茶道の心を糧としてより深くより豊かにしていきたいと思う。 三井古流煎茶道 大津分会 草野須美
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