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呉音と漢音(二) 古代から中世においては国が僧侶志望者に対し試験を行い、合格者は初めて得度・授戒が許され、正式な僧侶(官僧)の身分となります。つまりお坊さんは国家公務員だった訳です。それに対して国家試験を受けず、あるいは不合格となって自分は僧侶だといっている人たちのことを私度僧といいます。
私度僧といえば空海を思い浮かべます。空海は讃岐の出身。18歳で大学の明経科に入学するのですが、20歳で大学を後にして山林に分け入ります。私度僧としての修行の始まりです。延暦23年(804)、入唐留学僧(にっとうるがくそう)(長期留学)として渡海します。この遣唐船団には最澄も入唐還学僧(にっとうげんがくそう)(短期留学)として参加しています。しかし、私度僧では国費による留学は認められません。それで空海は急遽国家試験を受け、晴れて官僧としての身分を得て、密教請来という大きな目的のため長安を目指すのです。
やはり昔も国家試験に合格するのは難しかったようです。どんな試験が課されたかといいますと『法華経』や『金光明最勝王経』といった護国経典を漢音と訓で読まなければならないのです。読むだけではなく、誦経(暗唱)もしなくてはなりません。それと陀羅尼(真言)を唱えられるかどうか。
現在は各宗派ごとに得度・授戒が行われています。僧籍を得るための難易度は昔とは隔絶の差がありますが、お経を覚える苦労に変わりはありません。「門前の小僧習わぬ経を読む」といいますが、歳を経てから仏門に入った私には大変でした。字数266文字の『般若心経』でさえ覚束ない有様。『阿弥陀経』に至ってはこの先どうなるのだろうと、途方に暮れたことを思い出します。その『阿弥陀経』を寺門宗では漢音で読んでいることを意識したのは随分後のことでした。
では『阿弥陀経』は呉音と漢音でどう違うのか見てみることにしましょう。
上段が漢音読み、下段が呉音読みです。 どうでしょう、随分違いがあることがお分かりかと思います。
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