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梵音具(三)

前号に引き続き、梵音具のうち、今回は錫杖についてお話しようと思います。

  錫杖はお地蔵様が右手に持っているもので、木製の柄(杖)の先に金属製の大環(錫)を取り付け、そこに小環を付けます。僧侶が遊行のとき、これをゆすって音を出し、毒蛇や毒虫等から身を守るとともに、音を発することにより、むやみな殺生も避けられます。

  大環は宝珠形で、二股あるいは希に三つ股、四つ股になっており、二股には4輪ないし6輪、三つ股、四つ股には合計6輪もしくは12輪の小環を付けます。頂上には通常五輪塔が鋳造されています。

  修験道の山伏問答にも次のような受け答えがあります。旅の行者(山伏)が採灯大護摩供の列座に加えてもらうため、山伏の掟を試問される一節です。

  問者「錫杖の義は如何に」

  答者「錫杖とは、一法界の総体。衆生覚道の智杖なり。これに三種の別あり。四輪は四諦を表する声聞の錫杖。十二輪は十二因縁を表する縁覚の錫杖。六輪は六度を表する菩薩の錫杖なり。然れば即ち、錫杖の妙音により、三界、六道、受苦衆生の迷夢を覚まし、罪障を消滅して、速やかに菩提の妙果を得せしむるの義なり」

  法要時に使用する錫杖は柄の部分が短いものを用います。また、大環と小環は時代が古いものであれば鉄製もありますが、ほとんどは銅と錫の合金で、その割合、小環の厚み、大きさのバランスが整った錫杖は非常に清々しい音色を発し、まさに「菩提心」を起こさせるに十分な梵音具といえるでしょう。

  また、経文にも「三條錫杖」と「九條錫杖」があります。九條錫杖中に、
「當願衆生 十方一切 無量衆生
聞錫杖聲 懈怠者精進 破戒者持戒

  不信者令信 慳貪者(けんどんしゃ)布施 嗔恚者(しんにしゃ)慈悲 愚痴者智慧 驕慢者恭敬 放逸者攝心 具修万行 速證菩提」
と説かれております。つまり、すべの人々が錫杖の声(音)を聞いて、怠け者は精進を、戒を犯した者は持戒を、信心なき者は信心を、欲深い者は布施を、怒りっぽい者は慈悲を、愚かな者は智慧を、驕慢な者は敬いを、気ままな者は心を平穏に保ち、多くの行を修めて、速やかに悟りを得なさいと。

  そして最後に「故我稽首(こがけいしゅ) 執持錫杖

  供養三宝 故我稽首 執持錫杖 供養三宝南無恭敬供養霊山界会哀愍攝
(あいみんしょうじゅ)護持大衆成大願」と唱えます。故に最高の礼(稽首)をして、錫杖を持ち、仏・法・僧(三宝)を供養します。謹み敬って供養し、慈悲によって衆生を救う(攝受)心を保つならば、大願は成就するでしょう。 (梅村敏明)




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