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明治の求法僧 慧海(十)

医者としての慧海の方がすっかり有名になり、セラ寺には患者が後を絶ちません。本来の仏教の研究が進まないのを見かねて、大蔵大臣が部屋を提供してくれました。

 早速、セラ寺から日常の必需品などを移し、研究に没頭できる環境が整いました。それにも増して慧海にとって幸運だったのは、大蔵大臣宅でチー・リンポ・チェというチベット仏教最高の僧位を得た博士から、顕密について充分教えを請えたことでありました。「私はチベットにいるうちに、多くの博士、学者、宗教者、隠者からいろいろの説を聞いて利益を受けたが、このかたから受けた感化ほど大きいものはなかった」と感謝の意を述べています。

  物事はすべてうまく事が運ぶものではありません。ある時、街に出かけた折りに上等な石鹸を見つけたので店に入ると、なんとダージリンで知り合った夫婦がやっている店だったのです。慧海は機を制して「ダージリンで見たところのジャパン・ラマがこの国に忍んで来ている」と政府に告げると、金儲けができるぞと言っても、釈迦牟尼仏に誓ってもそんなことはしないと言ってくれたので、ひとまず胸を撫で下ろすのです。

 この後『西蔵旅行記』には、チベット人の婚姻や葬送、法王の選定方法や物産と交易、園遊と舞踏、祭典と記述は進められていきますが、「驚くべき鳥葬の実情」という小見出しで、世界にも類をみない葬送方法である「鳥葬」にも触れていますので、少しご紹介しておきます。チベットでの葬送方法には、土葬、水葬、火葬、鳥葬、塔葬の五種類があります。土葬は伝染病で死亡した人に対してのもので、大河のほとりの集落の人達は水葬にし、金持ちの人は火葬にもします。と、言うのは、チベットは高地ですから木はほとんど生えていません。そんな木を火葬のために使えるのは、一部の金持ちでしかできないのです。塔葬はダライ・ラマ法王やパンチェン・ラマ法王、それに活仏と呼ばれる高僧に対して行われる葬送方法です。遺体をミイラ化し、立派な塔を建立して永遠に礼拝の対象とするやり方です。

 さて、鳥葬ですが、文字通り鳥による葬送です。死者を小高い丘に運び、僧侶が読経を唱える傍らで、遺体をハゲタカが食べやすいように切り刻み、浄土に送り出す方法です。チベットでは一般的な葬送方法で、以前は公開もされていたようですが、今は外国人には公開されていません。

慧海は立ち会った鳥葬の様子を詳しく報告していますが、これ以上は省略しておきます。(梅村敏明)




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