西国霊場を中興された花山法皇が崩御されたのは1008年(寛弘5年)です。2008年は法皇の一千年御忌という年回りに当たることから、2008年9月1日から2010年5月31日までの期間中に西国33所の札所寺院の英断により「西国三十三所結縁御開帳」が実現しました。
当寺におきましても昨年10月3日より11月30日までを前期御開帳期間とし、31年振りにそのお姿を拝することができました。その御開帳期間中実に4万5千人余りの善男善女の方々が御本尊秘仏如意輪観音菩薩を間近に親しく拝され結縁されました。本年3月17日より4月18日までの33日間、後期の御開帳をさせていただきましたが、この期間中にも2万人を超える結縁者がありました。4月18日に御閉帳の法要を奉修し、以後33年間厨子の扉が開かれることはありません。感慨一入の御閉帳の瞬間でした。
さて、西国14番札所の三井寺観音堂に御本尊としてお祀りしております観音さまは、一面六臂(いちめんろっぴ)の如意輪観音菩薩です。つまり、お顔が一つに腕が六本ある像のことをいいます。輪王坐と呼ばれる特異な坐り方をされています。右足の膝を立て、その足裏と左の足裏を合わせています。左右にそれぞれ三本の腕があります。右手の第一手は立膝をしたところに肘をつき、指の甲を軽く右頬に当てて思惟のポーズをとっています。第二手は胸元に如意宝珠を掲げています。第三手は念珠を持っています。左手の第一手は光明山にすっと伸ばしています。第二手は蓮華を持っています。第三手には輪宝を持ち、如意宝珠と輪宝を持物としていることから如意輪観音と呼ばれます。
六本の腕は地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道の六種の世界、すなわち六道を表しています。そして右手の第一手を地獄道、第二手を餓鬼道、第三手を畜生道、左手の第一手を修羅道、第二手を人道、第三手を天道とし、その世界の生きとし生けるすべての者を救うという大悲大慈を現しているのです。
(梅村敏明)