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三毒
 

前号では観音経に説かれています功徳として、七難を免れるために南無観世音菩薩とその御名を「一心称名」することによって災いから難を免れることができるというお話をいたしました。続いて観音経では三毒について説かれています。経文を見てみますと、

若有(にゃくう)衆生 多於淫欲(いんにょく) 常念恭敬(くぎょう) 観世音菩薩 便徳離欲(若(も)し衆生ありて淫欲多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便(すなわ)ち欲を離るることを得ん『法華経』岩波文庫。以下同じ)
若多瞋恚(しんに) 常念恭敬 観世音菩薩 便徳離瞋(若し瞋恚多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち瞋を離るることを得ん)
若多愚癡(ぐち) 常念恭敬 観世音菩薩 便得離癡(若し愚癡多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち癡を離るることを得ん)
とあります。

お釈迦様は三毒とは淫欲、瞋恚、愚癡であるとおっしゃっています。淫欲についてはいまさら説明するまでもありませんが、色欲・色情・性欲と同義語です。これらは人間に備わった本能の一つでもありますから、完全に除き去ることは難しいことかと思われます。しかし、ここでいう淫欲は邪な感情でありますから、そういう思いが湧き出てきたならば、観世音菩薩を恭敬することにより、邪な思いを遠ざけることができるのであると申されました。さらに、そういう思いが湧き出ないよう、常に観世音菩薩を心に念じて恭敬することが大事であるとも。

次に瞋恚ですが、両字とも辞書を引いてみますと「いかり、いかる、うらむ」とあります。他人と比べて自分の境遇を嫉んだり、それによって怒りが生じて正しい判断や行動が妨げられるようなことは我々凡夫には日常茶飯事です。常に観世音菩薩を心に念じて恭敬することにより、そういった愚かな怒りは生じないというのです。

しかし、東京電力福島第一原発事故によって手塩にかけて育てた農作物や畜産物が出荷できないこと、更にこの先何十年も回復の見込みが立たないため、生業としてきた職業を廃業しなければならないこと、永年住み慣れた土地を断腸の思いで離れなければならないという方達の怒りはここでいう瞋恚は当たらないのは当然です。

第三には愚癡です。両字とも「おろか」という意味です。「愚癡をこぼす、愚癡る」の愚癡とは違って、物事の本質、道理が理解できないでいる人のことを指す無明(むみょう)のことです。七難の場合は一心称名でしたが、三毒には常念恭敬であるというのです。

(梅村敏明)

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