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年の瀬から新年の三井寺 暦が「師走」となり、ましてや中旬ともなりますと、当山では迎春準備に追われる日々が始まります。 二十五日頃から注連縄作りを始めます。注連縄の本体は業者さんが納めてくれますが、ウラジロとユズリハ、五幣を付けなければなりません。全山のお堂の分を用意しなければならないので準備するお坊さんは大変です。しかもお堂の大きさによって大・中・小と作り分けします。出来上がった注連縄は鏡餅と一緒に二十九日頃より各お堂に飾り付けられます。 二十八日には三井の晩鐘のすす払いが行われ、鐘楼の注連縄も取り替えられます。またスポーツ少年団の児童によって境内の清掃奉仕が行われます。門松が山師の職員さんによって仁王門、総門、金堂、観音堂に設えられて新年を迎える準備が整います。 二十九日は宗祖智証大師のご命日で、午前十時より定例の大師講が唐院で行われます。そしていよいよ大晦日になりますと、高張り提灯を掲げ除夜の鐘の準備をします。 午後四時から唐院におきまして修正会を行います。この法会は他の寺院では正月に行われますが、当山では大晦日に奉修しています。法要が終わりますと諸堂を巡拝し、この一年間の神仏によるご加護を感謝し、般若心経を唱えます。 金堂前には篝火が焚かれ、甘酒の接待もあり参詣者も徐々に増えてきます。除夜の鐘に参加する人達は西国十四番札所観音堂に集合し、各々提灯を手にして十一時三十分に金堂に向けて出発します。道中は僧侶の「六根清浄」のかけ声に「懺悔懺悔(さんげさんげ)」と呼応します。 そして午前零時「三井寺除夜の鐘」の声とともに第一鐘が撞かれます。我々は金堂で読経を続けます。当山の除夜の鐘は百八ではなくて、撞けば撞くほど琵琶湖に棲む竜神が喜び、鐘を撞いた人には竜神が持つ福が授かると言われていますので、希望者がある限り行われます。後片付けを終えますと、午前五時には観音堂にて新春初祈祷があり、これから一年の寺門繁栄、伽藍安穏を祈念して観音経を読誦します。 八日には金堂に五大尊(不動明王・降三世明王・軍荼梨明王・大威徳明王・金剛明王)の大幅を架け、仁王護国般若波羅密経を転読して国家安泰、萬姓安楽を祈る仁王会(にんのうえ)を厳修します。引き続き一山住職により寒中説法があり、参詣者には芋粥が振る舞われます。 翌九日には長等山地主神に対して山の神供養を長等山中にて行い、伽藍安穏、坊中安全を祈願いたします。 年末から新年の当山の様子を簡単に記してみました。
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