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日本霊異記(六)

小欄を書いています三井寺観音堂の窓から、十数年前までは琵琶湖対岸に近江富士と称えられる三上(みかみ)(御上)山が、その秀麗な姿を見せてくれていたものです。しかし、湖畔にマンションが建設されたため、山容がすっぽりと覆われてしまいました。『近江名所図会』にも紹介された景観はもう望むことはできないのでしょうか。

さて、今回は三上山を神体山とし、その山裾に鎮座します御上神社が登場するお話です。また、三上山は俵藤太秀郷がムカデ退治をしたという伝説でも知られた山でもあります。

日本霊異記下巻に「修行者を妨げたために猿の身になった話」として蒐集されています。

近江国野洲郡(おうみのくにやすのこおり)(滋賀県野洲市)の御上の岳に神社(御上神社)がありました。その神社のそばにお堂があり、宝亀年中(770~780年)に、奈良大安寺の僧、恵勝(えしょう)が住んで修行をしていました。ある時、夢に一人の者が現れ、恵勝に対して「わたしのためにお経を読んでください」と頼みました。目が覚めて夢のことを思いめぐらすと、不思議でなりませんでした。その翌日、小さな白い猿が恵勝に近づいてきて「この寺に住んで、わたしのために『法華経』を読んでください」といいます。恵勝が「そなたはいったいだれなのか」 と尋ねると、猿は「わたしが天竺国の大王である時、修行僧に仕える従者の数を制限した。修行を妨げたわけではないが、従者の数を制限したことが罪業となって、死後に猿の身となってこの社(やしろ)の神となった。猿の身を逃れるため、わたしのために『法華経』を読んでください」と訴えました。

恵勝が「読みましょう。しかし、供え物をされよ」というと、猿は「ありません」と答えた。「供養の物がなくてはお経は読めません」と恵勝がいうと「仕方がありません。浅井郡(あさいのこおり)(長浜市)で大勢の僧が『六巻抄』を読もうとしているから、その講中に入ることにしよう」と猿は言って立ち去りました。恵勝が浅井郡に行って満預(まんよ)法師に猿に頼まれたことを告げても、信じてもらえず、聞き入れてくれませんでした。それではと自分で『六巻抄』を読もうとお堂で準備をしていると、子供や優婆塞(うばそく)(在家の男性信者)がやってきて「小さい白い猿がお堂の上にいます。振り返ると本堂は倒れ、仏像も壊れてしまいました」と告げました。満預法師と恵勝は猿の言葉を信じ、『六巻抄』を読んで大願を叶えてやりました。仏道を修めようとするのを妨げる者は猿となる報いを受け、僧が法会を催すのを妨げる者は、悪い報いを受けるのだとしています。

(梅村敏明)



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