辰年の竜に因んだ施本用の小冊子には、天台の始祖と仰がれる竜樹菩薩の記述は数行。 南印度の大仏教学者ナーガルジュナ（150〜250年）漢訳名竜樹。 中国、日本諸宗は総じてその思想を承け、八宗の祖と呼ばれるとのみ。 菩薩はバラモンの家に誕生、のちに大乗の思想を広め、仏教の奥旨を極める。 諸経の論書は一千余巻。中観論。大智度論を著わし「智目行足到清涼池」の名言がある。 菩薩の流れを汲む中国の高祖天台智者大師（538〜597年）も論述摩訶止観の中で 「中道を修するは目・足ありて清涼池へ至るが如し」と述べられている。 この中道は両極端を離れた中正の道のみならず、私如きには修学おぼつかない深遠の教義、 空仮中三観、三諦円融の中道観を指されての言葉。教理を深く了解するを目とし、 精神統一して心を対象に止め、定慧をもって本質を観る止観の実践行を足とする。 目と足相等しく解行双雙して始めて悟りの境地（清涼池）へと至る。

二尊の金言に日頃の怠りを懺悔して慎んで拝伏。

遊心庵主・岡部善恵