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何処へ
体力、気力が乏しくなると、何故か鮮明に浮びくる光景がある。
新設された石柱の礎の下から、陽光に導かれ、部厚いアスファルト舗装を自力で押し上げ、
其の裂目から地表に頭をもたげた逞しい水仙の角芽。
厳しい環境の中での小き命の大きな働き。
よくぞ、ようこそと跪ずき、自然の営みと、
あるがままの条件を受けとめて生きぬく草木の底力に、己が心身の脆弱を恥じ入った春雪残る古刹の参道。
大気に抱かれ、豊かな海を湛えもつ宇宙の宝船・地球号の船内は、
もはや小きもの、弱きもののみならず、海洋生物の頂点にある鯨迄もが絶滅の危機に瀕して久しい。
今、人類を含むこの船の動植物、約二百万余種。
国の統計の推移は年を経る毎に種の絶滅品目の増加が雪崩現象の如く加速を示す。
生態系、食物連鎖は末期的様相。何処を目指すのか私達は。
美食を貪り、便利を求め、踊り疲れの行列は、やがては亡びヶ淵を巡るのか。
仏陀の教えは人のみならず、全ての命の貴さと調和に覚めよとの筈なのに。
遊心庵主・岡部善恵
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