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身心の苦患(雑阿含経・巻第五)

初期仏教の阿含経百八十三巻は、釈尊成道後の二十一日以後十二年間の教説。 人間釈尊の思想を仰ぐ貴重な経典で、法句経と共に日々仏恩に与っている。

ある時、サールナート(鹿野苑)に百二十歳の長者が自力で仏陀を訪ね、 老いと病いの苦しみを訴えて安楽になれる教えを乞う。 仏陀は「善きかな長者よ苦患の身において苦患のない心を修学せよ」と。

経典はこのあと智慧第一の弟子舎利弗尊者が詳しく仏陀の言葉を説き示し、 愚痴無聞の凡夫は身が集合体であり、縁により生じ、縁により滅する道理を思考せず、 身を我が所有であると愛着し、病み、老い、肉体が変化してゆくことに苦悩し心転倒する。 これを身心苦患と名づけ、多聞の聖弟子はその真如の法を知る故に愛着の綱に繋がれず、 身が老い変じ、たとえ異なっても恐怖せず障りなく苦悩の淵に止まらない。 これを身は苦患しても心は苦患せず、故に不苦患心と名づけるのであると諭しておられる。

二千五百年の時空を越え、長者と共に釈尊の御前、舎利弗尊者の御前に座す心地して、頭面攝足帰命礼。

遊心庵主・岡部善恵





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