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思わざるこそ(七猿歌より) つらつらと、うき世の中を思うには、
まじらざるこそ、まさるなりけれ
見聞かでも、いわでもかなわざるものを、
うき世の中にまじるならいは
つれもなく、いとわざるこそうかりけれ、
定めなき世を夢と見ながら
前号に記した見ざる、聞かざる、言わざるの三猿歌と合わせた七猿歌は、天台教学の要諦、諸法実相、三諦円融を内蔵した御歌ではと思える。
「志を立つるは独りを善しとし、世間と共に移り変わり、世の厭うべきを覚り、色声を空(むなし)うして、他人の好悪長短を説かず、一切の善悪を都(すべ)て思量することなかれ」と安楽律院の近代の名僧光謙比丘のご垂示で結ばれてある。 耐え忍ばねばならないこの人の世。やがては等しく訪ずれる老、病、死の必定を胸に納め得て、煩悩の源、執着の虜とならぬよう、真理の導きを仰ぎ、今一度び七猿歌の要旨の一首、慎んで唱え奉る。
見ず、聞かず、言わざる三つのさるよりも
思わざるこそまさるなりけれ
南無慈恵大師常住金剛 以下次号へ続く
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