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二度とない人生だから(4) 四十年の歳月を経た今でも、ベトナム戦争の数々の記事のことが思い出される。日本からの特派員記者と秘密裡に会見した南ベトナム学生運動家の悲壮な訴えは忘れることができない。 「仏教僧の抗議の焼身自殺は、自分達にとっては最大の衝撃。仏教僧は我われの伝統の象徴であり、貴重な存在である。その指導者が、平和と仏教弾圧の悪政に抗議して火柱となった。我われは、人間的自由、信仰の自由を奪われて黙ってはいられない。そう要求する自由すら奪われた今、地下にもぐってはいるが、かえって学生の団結は強化された。カトリックの学生も、仏教徒の学生も一致して政府に対し、非暴力と不服従をつらぬいてゆく。どうか、日本の皆さんに伝えて欲しい。我われのこの思いを理解して精神的に援助してくださいと」。 長期にわたる泥沼戦争といわれた南北ベトナム民族解放戦争は米国の介入により一層熾烈を極め、一九六〇年代に仏教僧の命を以っての抗議が相次ぎ、尼僧が法難を前面にたて抗議の焼死は八名にのぼり、同時期の女子高校生の死の抗議は、今も坂村真民詩集に長編の『ベトナムの少女よ』として残る。 以下次号へ続く
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