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二度とない人生だから(10) “寝も得せず 無事を祈るや 月に人” 月面に、人類の第一歩が到達した瞬間の感動の一句の後、将来必ず宇宙開発が盛んとなり、負の産物が宇宙空間に浮遊しはじめるに違いないという、灰色の心境がぬぐいきれなかった。 あれから四十年。日本を旅立った月探査「かぐや」が送信してきた映像は、薄い雲の衣を纏い、生命の水を満々と湛え、月の向こう側から静かに昇る青い惑星「地球の出」。溢れる想いは涙となった。 此の美しい星の内状は、長引く戦争。各地の紛争。難民問題や食糧危機。環境汚染と地球温暖化にともなう多くの動植物達の種の絶滅危惧。全世界に棲息する大型動物の過酷な生活条件も末期的状況を提している。食物連鎖の頂点にある人類の番を直前に、まるでよそ事の如く連日の美食番組の氾濫。真民詩の『遠い神話』が思い出される。 「地球の出」に映し出された、絶妙のバランスに恵まれた美しい生命の星を、故真民さんならどのように讃えられるであろうか。今の日本の有様はどのような嘆きの詩となるのだろうか。統べてのいのちにかけがえのない一度きりの生涯を。南無 (完)
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