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仏陀は悟りを得られてより八十歳でご入定に至る四十五年間、インド広域での伝導の旅は、相手の素質に応じた比喩や物語をもちいた説法が多い。その内容は多岐にわたり、人生、社会、人間関係、家庭生活、修養、信仰、政治、経済等、数ある教説の中、経済の部『物の使い方』を再び読み直してみた。

仏陀の直弟子阿難尊者が、ウダヤナ王の妃から五百着の衣の供養をされ快く受けたおり、王は尊者が貧りの心で受けたと思い阿難に尋ねた。「尊者は五百の衣を一度に受けてどうしますか。」阿難尊者は「大王よ多くの比丘は破れた衣を着ているので彼らに分けます。」王「破れた衣はどうしますか。」「破れた衣は敷布にします。」「古い敷布は。」「枕の袋に。」「枕の古い袋は。」「床の敷物に。」「古い敷物は何に。」「足拭きに。」「古い足拭きは。」「雑巾にします。」「その雑巾は何にしますか。」「大王よ。私共はその雑巾を細々に裂き、泥に混ぜ、家を造るときの壁の力と致します。」王は悦び、新たに五百の衣を布施したという。

布施の心も、物の使い道も活しきることこそが仏の願いのはずなのに、私を含めた今のこの世相の有り様は、先の世にも後の世にも余りにも恥ずかしい。


(以下次号へ続く)   


遊心庵主・岡部善惠




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