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一人ではない 先日、親友の三周忌の法要に参列した。彼との付き合いは、小学校の時から三十年近くに及ぶ。彼は将来のプロ野球選手を夢見て野球ばかりしていた。高校卒業後は酒造メーカーに就職し、杜氏を目指して頑張っていた。そんな彼が自ら命を絶った。仕事上のトラブルが原因らしい。このとき、私は自殺した彼の心中がまったく理解出来なかった。 ところが、私にも彼と同じ考えが起こった。周囲の声には全てトゲがあるように感じられ、毎日の生活も仕事もうまくいかず、何をしても、どう頑張っても報われない気がして辛かった。現状から逃げ出して楽になりたかった。このとき、死に対する恐怖はなかった。むしろ、ずっと眠れるのだから、これほどよい選択肢はないと思えたのである。 私は死ぬ準備をはじめた。そんなとき、私の通常ではない行動に気付いてくれる人たちがいた。家族や師匠、上司、友人たち。皆と話しをするうちに自分がおかしくなっていることに気づき、次第に我に返っていった。私にも私を見てくれている人がいることに気づき、心も体もずいぶん楽になった。私は一人ではない。いま私は、失った友人の話を聞けなかったことが、すごく悔しい。 西坊 信祐 << 一心に全力で | グリーン・コンシューマー >>
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