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お大師様の教え 今年は智証大師の教法が国に認められてから、一一五〇年の節目の年に当たる。大師は天台の教えや密教をもって世の人々を救おうと、生涯を通して「済世利人」を実践された。 自分の利益を考えず、人を助けることはとても難しい。もし「知らない人を助けるために、あなたは死地に飛び込めますか」と問われれば、私は心の中で「無理だろう」と答えているだろう。 当山では、勅書の発行された五月二十九日に慶讃法要を行い、特別展示として国宝・太政官給公験牒も公開された。私は法要を通して、大師が命をかけて学んだ軌跡の一端を知ることが出来た。 このとき、ふと頭をよぎったのは、亡き父母や祖母のことだった。何の利益もないのに一体どれほどのことを私にしてくれただろうか。どれほどの安心感を与えてくれただろうか。大師はきっと皆にとっての父母のような存在だったのだろうと思った。 「済世利人」の実践は難しい。でも「無理」ではなく「やりたい」という気持ちを持つことが大切だと思った。 西坊信祐 ・「法の華」一覧に戻る ・「教義の紹介」に戻る |