今、手許にある五智の茶碗に、心静かにいれたお煎茶を味わいながらこよなく至福を感じています。 昨今の世相は混沌とした迷いの多い日々。心までが閉塞してしまったかのようです。 人々はみんな御仏から授かった素晴らしい本来の智慧のあかりをどこかに置き忘れてしまったのでしょうか。

日常茶飯事と申しますが、今こそ三井古流「常点前」のこころである五常・五行をそしゃくし、 ここらで立ちどまり、いま一度自分を見つめなおしたいものだと思うこの頃です。

五智の智は日を知る、その恵みを知る、大日如来の五種の智慧を知ることです。 即ち、福徳、好相、身心調和の如来の恵みを受けることにより、 怖れを除き、御仏の妙味を受けることができると言われます。 難しくてなかなか理解できないのですが、五智円満の二十一世紀に、生きとし生けるものが、 本当の幸せを実感できる時間を共有したいものだと願いながら、五智茶碗との出会いに感謝しました。

三井古流煎茶道　松江分会　福間和喜子