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施茶の一日 五月のゴールデンウィークのある日、施茶の当番が巡ってきました。 三井寺の山内では四季折々の花を楽しめますが、当日、施茶が行われる宝寿院の裏庭にもシャガが美しい花を咲かせていました。さっそく紫の花弁に鮮やかな黄色が映える花を摘んで生け、門の脇にある石のお地蔵様にお花とお水を供え、お客様を迎える用意をします。 やがて玄関先に吊り下げた鐘が木槌で鳴らされるとお客様のお越しです。玄関に出迎える人、茶菓の用意やお点前の準備をする人、自然に準備が整っていきます。お客様に本当に美味しいお茶を飲んでいただくには、みなが協力して、それぞれの役目を果たさねばなりません。お稽古の集大成のつもりで一煎のお茶に心を込めてお出しします。ペットボトルのお茶に慣れた若者にこの一煎をしみじみと美味しいと言ってもらうこと、新緑の庭を前に静かで寛としたひとときを過ごしてもらうことは、とても嬉しいことです。 宗匠は「美味しいものを食べて怒る人はいないでしょう」と言われます。施茶の心も美味しいお茶で争いのない穏やかときを過ごすということなのでしょう。 私自身も三井古流にご縁をいただいて充実したひとときを過ごせることに感謝しています。
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